保育園の騒音に苦慮?
先日の朝日新聞朝刊に、保育園の騒音に関する記事が載っていました。
保坂展人という世田谷区長が、「保育園がうるさい」という近隣住民からの対応に苦慮している、と発言したことをめぐる記事です。
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まあ、ひどいものです。
詳細はスキャンした画像を見ていただくとして、とにかくこの保坂展人・世田谷区長も、記事内でコメントをしている同区保育課の上村隆課長も、社会福祉法人「杉の子保育会」の星野勤理事長も、ジャーナリストの猪熊弘子も、そして記事を書いた朝日新聞の記者・後藤遼太も、「たとえ子どもの声であっても、度を過ぎたやかましさは騒音被害をまき散らす」という想像力を、これっぽっちも働かせることができないようです。
一読すると、「人工透析を受けていて家にいるので、騒音は健康に差し障る」といった(極端で特殊な)被害者の声も紹介し、新聞が金科玉条のようにのたまう「両論併記」の体裁はつくろっているように見えますが、そんな要素はごく一部で、単なる「アリバイづくり」のためなのは見え見え。
「保育園の音を騒音だなんて信じられない!」「子どもたちの声が迷惑だなんていう奴は人間じゃない!」とヒステリックに叫びたい本音が、タイトルや見出しの付け方を見ただけでわかります。

「騒音」苦情 悩む保育園
「対応に苦慮」世田谷区長のつぶやき反響
ペアガラス「開かずの窓」
園庭使用制限
交渉で設計変更
待機児童は786人
地域に溶け込み理解得る努力を

これら見出しを含む記事のすべてが騒音加害者、つまり区や保育園の側を擁護する視点を強調した、非常にいやらしいニュアンスでまとめられています。
「園児の声が騒音だと文句を言う人がいるなんて信じられない! それでなくても、保育園はこれだけ無理な騒音対策を強いられていて大変なのに! 園児たちも大声で遊ぶことができず、我慢を強いられてかわいそう! 待機児童がこんなにたくさんいるのだから、騒音がどうしたとかわがままを言うな!」
と言いたいがために書かれている記事なのは明らかです。形だけでも「両論併記」をしたいのであれば、もう少しそれらしくまとめろよと笑ってしまいます。

「窓に防音対策をする」「建物を隣家の境界から離す」「園児が庭に出る時間を制限する」などなど。記事では明らかに「ここまでしているのに文句を言うなんて!」という視点でまとめられていますが、「騒音を減らすため、できるだけのことはする」のは当たり前のこと。
奥深い山の中にある保育園。農村の畑だらけの中にある保育園。そんな、どれだけ大騒ぎをしても誰にも迷惑をかけることのない保育園ではなく、都会の住宅地にある保育園だからこそ、できるだけの騒音対策をできる限りやるのは当然のことなのに、「こんな苦労を強いられているんです!」と同情を誘うような悲鳴を上げるだけで、自分たちの加害者性をまったく振り返ろうともしない保育園や政治家や自治体の職員。
星野勤という理事長の「子どもに『歓迎されていないんだよ』と伝えているようで残念」という、問題に正面から向き合おうとしない情緒的なだけのコメントのあるように、「『子ども』を持ち出せば、誰も文句は言えないだろう」という考えをしている人物にも虫ずが走ります。

たとえ保育園児であろうと幼稚園児であろうと、「公共の場では、人に迷惑をかけないようにしつける」という教育が、日本ではまったく行われていないように見られます。町中や公園、スーパーやデパート、電車やファミレスの中など、あらゆる場所で子どもがギャースカギャースカ雄叫びを発し騒ぎまくっても「子どもだから」と容認するだけで、親や周囲が「いけません」と本気で注意する気もなければ、そもそも公共の場でのマナーを教えようという気もないのが日本の家庭や教育。
家庭や教育機関がそれをきちんとしつけようとしないのであれば、周囲の住民が保育園に防音対策を要求するのも、園児が庭に出る時間を制限してくれと要求するのも、やむを得ないことでしょう。
それなのにジャーナリストの猪熊弘子というのは、「子どもが町中でのびのび遊ぶ権利は、大人が守らなければならない」などと、まるでとんちんかんなコメントをしています。
日本の子どもは、ちょっとのびのびと遊びすぎ。そもそも、のびのび遊ぶこととギャースカギャースカ騒ぎまくることは違う。
大切なのは「周囲に配慮して、おとなしくも、のびのびと遊ばせる」という考えだと思うのですが、こうした視点を持たずにてきとーなことを言っていても務まるジャーナリストが「子育てに詳しい」というのだから、これではどうしようもありません。

つくづく、「子どものためなら、騒音くらい我慢しろ!」というのは、なんとも恐ろしい考えだと思います。
「二酸化炭素排出を抑えるためなら、原発くらい我慢しろ!」
「日本の国防のためなら、オスプレイくらい我慢しろ!」
と言っているのと同じでしょう。それなのになぜ、これらの公害については加害者側をヒステリックに叩くくせに、こと、保育園に限らず、日常の騒音問題については被害者を叩くのが当たり前だと考えるのか。新聞記者だけでなく、日本人全体のメンタリティというのは本当に理解できません。

保坂展人世田谷区長、同区保育課上村隆課長、社会福祉法人「杉の子保育会」星野勤理事長、ジャーナリスト猪熊弘子、朝日新聞記者後藤遼太。これらの人々には、ぜひ、さわがしい保育園の隣に住み、仕事を在宅に切り替えて、まともに暮らしたり仕事ができたりするかどうかを、1年でいいから実際に体験してもらいたいですね。
そうしてから、「保育園の音を騒音だと言うなんて信じられない! こんなに快適に暮らして仕事もできるのに!」と言えるのなら、言ってみてほしいと思います。
それができないのなら、人様が心の底から困り悩んでいる騒音問題について、言い訳ばかりガタガタ並べるなということです。
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カテゴリ:子供・学校・保育園
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