「新幹線のスピーカーをぶっ壊したい」by津川雅彦
 俳優の津川雅彦氏が、新幹線のアナウンスについて「スピーカーをぶっ壊したい」と激怒しています。といっても15年も前の文章ですが。
 縮刷版を調べていて見つけた、朝日新聞2000年4月20日付夕刊のコラムから。

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オフステージ

津川 雅彦

「心」忘れたアナウンス 虚と実の狭間 3

 《前略》「心」はフランスの駅にもあった。パリからアムステルダム行きの列車に乗った時、ベルも鳴らず、アナウンスもなく、窓の景色がゆっくりと流れて、初めて動いているのに気付いた。別れの時を迎える乗客の「心」を尊重し、気付かせないように静かに走り出すことをポリシーとしているからだ。

 翻って日本の新幹線は、「列車が入ります。黄色い線よりお下がり下さい」に始まるけたたましいアナウンスとベル、動いた後も「飛び乗り飛び降りは危険です」と絶え間ない管理と案内に終始し、乗客の「心」を逆撫でする。セリフを覚えるにも、集中力が保てない。この「心」ないスピーカーどもをぶっ壊したい。

(俳優)

津川雅彦コラム.jpg

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 本当にぶっ壊してくれればよかったのに(笑)。

 津川氏は<乗客の「心」を逆撫でする>と書いていますが、実は、こういう<管理と案内に終始>する<たたましいアナウンスとベル>を大多数の乗客が「望んでいる」ところに、スピーカー騒音の根本的な問題があるということは、これまでに何度も指摘したとおり。
 日本人の多くが、このような放送に<「心」ない>と腹を立てているのであれば、そんなものはとっくになくなっているはず。現実はむしろ逆で、人をバカ扱いするような放送を「心ある」と感じてしまっている人が圧倒的多数だからこそ、この国の至る所に「ああしましょう、こうしましょう、お知らせです、ご注意ください、踊り子さんには触れないでください!」式の過剰なアナウンスが溢れかえるわけです。

 それにしても、津川氏クラスの「大物」になると、新幹線は使うけど在来線に乗ることはないんだろうと思います。新幹線のアナウンスとは比べものにならない、在来線の駅や車内放送の凄まじさ(特にJRと東京メトロ)を体験したら、津川氏はいったいどうなるんだろうか。口から火を噴いて暴れ出し、本当にスピーカーをぶっ壊してくれるかな。

 私は数年に一度利用する程度ですが、新幹線のアナウンスも確かにうるさいです。特に東京駅のホームに行くときは朝からうんざりします。
 ただ、車内アナウンスについては、発車直後のだらだら続く放送は気になるものの、全体的には在来線と比べればずっとましだと思っています。なぜ、そうなのかは『京都、そして新幹線の騒音雑感その2』というエントリーに書いているので繰り返しませんが。

 このエントリーには、在来線ではあまり遭遇することがない、新幹線ならではの騒音として、乗客がパソコンのキーボードをカタカタ叩く音についても書いています。
 実は去年、東北新幹線に乗ったとき気づいたことがあります。座席の背もたれに「ノートパソコンをご利用の際は、キーボードの音にご注意ください」というような文言の貼り紙が貼られていたのです。最近になって、新幹線でキーボードの音について苦情が増えたのでしょうか。

 このブログではあまり触れていませんが、やたらに貼り紙をベタベタ貼られるのも不愉快なものです。本質的に「ああしましょう、こうしましょう!」と規範や道徳を押し付けてくるという意味で、スピーカー放送も貼り紙も同じだからです。
 ただ、放送が「耳を塞ごうがどうしようが、否応なく聞かされる」のに対して、貼り紙は「目を背ける、つむる」という手段をとることができる。だから放送より少し許容範囲を広くとって、あまり問題にしていないだけのことです。
 本当はこんな貼り紙などなくても、長時間、キーボードをカタカタカタカタ叩き続ける無神経な乗客がいなくなれば一番いいのですが、東北新幹線では貼り紙をして少しは状況が改善されたのでしょうか。
 東北より、東海道新幹線のほうがよほどパソコンカタカタいわせて「“わし、忙しくて目が回りそうな一流ビジネスパーソンだもんねケケケ”アピールをするアホ」は多いような気もしますが、現在どうなっているのかも気になります。

 しかしまあ、そうやって考えていくと、「人が直接発するやかましい音」については、この国ではわりあい「うるさいから、なんとかしよう」という方向に行くようです。
 携帯電話の通話しかり、キーボードの音しかり、新幹線では車内販売が行き来することも少なくなって、「浜松名物うなぎ弁当、温かいコーヒーに冷たいアイスクリームはいかがでしょーかあー」というしつこい声に、イライラさせられることも減りました(どうせ、採算が合わないからやめただけなんでしょうが)。
 子供連れや、昼間っから酒を飲んでいい気になっている乗客の大声についても、新聞の読者投稿欄などで「いいじゃないか」「いや、うるさい」と、ときどき議論になるのを見かけます。

 一方で、過剰なアナウンスについては減るどころか増え続けるだけ。議論が巻き起こることすらありません。JR西日本が山陽新幹線で走らせていた、車内放送を極力しない静かな車両「サイレンス・カー」も需要が少なかったようで、11年にわずか十年あまりで廃止されてしまいました。
 この車両に人気が出なかったという現実こそ、日本人が「アナウンスで指図されなきゃ気が済まないんだよ!」と考えていることの証明ですね。せっかく「鉄道会社にしては、気の利いたことをするやんけ」と思っていたのに残念です。

 芸能人が「うるさい」と怒っているコラムは、『薬屋、うるさいぞ!静かにしなさい。』というエントリーでも紹介しています。
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