「ガキ使」に出てきた異様なステーキ屋
 テレビを見ていて、あまりにも驚き呆れたことがあるので、ざっくりと書き殴ります。

 たまに見ているダウンタウンの「ガキの使いやあらへんで!!」で、赤坂見附のステーキ屋が出てきました。何が驚いたってその店の店員が、口に(たぶんプラスチック製の)防毒マスクのように大げさな「防具」(としか言いようのない奇妙なもの)を着けて接客していたことです。
 番組中の会話からすると、この透明な防具は「客や料理に店員の『唾』が飛ぶのを防ぐため」に着けているらしいのですが……なんなんでしょうか、あの異様な接客風景は。

 「今日は風邪気味だから」とか「インフルエンザが流行っているから」とか、そういう理由で店員がマスクをするならわかります。私だって、店員がゴホゴホ咳をしながら出てきたら、「マスクぐらいしろよ」「つーか仕事休めよ」と思います。
 でも、病気にかかっているわけでもない健康な店員が、通常の接客をしているときに飛ぶ「見えないレベルの唾」まで、プラスチック製のものものしい「防具」をつけて神経質に防がなければならない理由って、なんなのでしょう。

 店員全員があんなマスクで接客している(わけだよなあ)店が世間に受け入れられているということは、店の「ほんのわずかでも、客(料理)に唾を飛ばしてはならない!」と、客の「店員の唾がちょっとでも飛ぶと不潔だから防げよ!」という、互いに過剰な清潔意識がマッチした結果なのでしょうが、他人の「見えない唾」まで、まるで世界を滅ぼす病原菌のように「徹底排除」しなければ気が済まない感受性って、異様としか思えないのですが。
 店員も客も、こういう店をおかしいと思わない人たちというのは、普通のラーメン屋やレストランは「とても不潔で入れないよ!」となるんでしょうか?

 もし、私がその店で働くことになったとしたら「私は病原菌じゃありません。歯磨きぐらい毎日してるし、普通の接客をするのにこんな防具は必要ないですよ」と反発するでしょうね。だって、あんなものを着けろと強要されるのは「お前は病原菌だ!」と言われるのと同じですから。
 逆に客としてこの店に行ったら、「こんな防具を着けているのは、なぜだろう。もしかするとこの店員は伝染病にでもかかってるのか? 昨日飲み過ぎて今にもゲロを吐きそうな状態で接客してるのか? 口の締まりが悪くていつ涎を垂らすわからないとか? そんな店で飯を食う気になれないから今すぐ出よう!」と思いますね。

 こんな「見えないレベルの唾」まで徹底排除しないと気が済まない日本人の行き過ぎた清潔意識は、「あまり潔癖になりすぎると、かえって病気への抵抗力が低くなる」と一部で問題視されているようです。医学知識は皆無なので断言することなどできませんが、私も素人なりにこの意見には納得できます。
 赤坂見附のステーキ屋がやっていることは、「徹底して清潔であらねばならない」という「潔癖病」が進みすぎた、典型的な「現代病」の一つじゃないでしょうか。

 そして、清潔がどうのこうのというよりさらに問題なのは、「口を大げさな防具で隠した店員が、表情だけはニコニコと接客する」その「光景」が、あまりにも異様だということです。

 「口」というのは、人間が感情を表現する器官です。言葉を発するところだからというだけでなく、楽しいことがあれば「口を大きく開けて笑い」、悲しいことや口惜しいことがあれば思わず「口を歪めてしまう」というように、その形や動きも「表現」になる器官なのです。
 確か心理学の実験でも、実は「目」より「口」の動きや形のほうが、その人の心理状態をよく表しているという結果があったように思います。

 この店の「防具」は透明なものでした。だから、プラスチックを通して口の形や動きは見えるようです。でも、見えていればいいというものでもないでしょう。
 店員の「口」を防具で隠す、つまり(一応見えているとしても)店員と客との間にプラスチックという無機質な素材で「壁」を作り、わざわざ壁を作っているのに露出している目の表情だけは「ニコニコ」と接する――。
 そんな完全にアンバランスで人間性を欠いたこの店の接客風景を見て、私は大げさでなく「口が歪んで」しまいました。

 「お前の口は病原菌だ。見えようが見えまいが絶対に唾を飛ばさないよう、防具を着けて接客しろ」と要求する店主も、そこまで人をバカにした要求をされてニコニコ接客する店員も、そんな珍妙な様態の店員が出てくる店で「なんか変だなあ」とも思わず飯を食う客も、私は「おかしい」と思います。
 「おまたせしました」だの「こちらが和風ソース、こちらがデミグラスソースです」だの、ごく普通の短い会話をするだけで「唾が飛ぶ! 汚い!」と神経質になる人たち。本当に、この国の人たちは「他人の存在の何から何までが、嫌で嫌でしょうがない!」みたいですね。

 きっと、この店と同じようなことをする店は、これからどんどん増えていくんでしょう。飲食店だけでなく、スーパーやコンビニなどにも広がって、いずれはどんな店でも店員が、半導体工場で働く人みたいに、全身を完全防菌したスーツで接客するようになるのかもしれません(だって、他人って汚いもん!)。
 会話はもちろん、顔をヘルメットで覆うからすべてマイク越しで。それ以前に、店員だけでなく客も「病原菌」を持ち込まないようにすべきだから、店に入る前に除菌シャワーを浴びる必要があるでしょうね。あ、そんなことよりもまず、客も店員も風俗店みたいに、必ずイソジンでうがいすべきなんじゃないの? だって、他人って汚いもん!

 「見えない唾」レベルが気になるというなら、いっそそこまでやればいい。ああ面白い。そしてバカみてえだ!
 この国の人たちは、いったいどこまで「人間らしさ」をなくしていけば気が済むんでしょうか。

 ちなみに、フリートークで松本人志が言っていた「こちらのお席へどうぞ」とマニュアル通りに強制する、融通の利かない店に腹が立つという話は私も同感。でも、今はどこへ行ってもそんな店ばかりじゃないですかねえ。
 その後の「居酒屋で精算した後、日本酒を頼んだら650円請求された。10万円ぐらい使ったんだからそれくらいサービスしろや!」というエピソードは、ちょっと微妙だなーと思いましたけどね。
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