「ありがた迷惑、火の用心」が始まるよ~
 本会の機関誌『AMENITY』31号に、ブログの記事「犯罪者に優しい防犯パトロール」の転載を許可してくださった、謎のイタリア生まれの戯作者パオロ・マッツァリーノ氏が、月刊誌『新潮45』で新連載を始めたとブログで告知しています。題して「むかしはよかったね?」

 詳しくはリンク先を読んでいただきたいのですが、「むかしの日本人は素晴らしい人ばかりだった、いまの日本と日本人はダメだ、いう言説にかたっぱしからメスを入れて検証してやろう、ウソにまみれた日本庶民文化史を正しい方向に導こう、きれいごとだらけに捏造された日本庶民文化史を正しく書き直そうというね、まあ、私のライフワークともいえるテーマ」だそうです。

 12月号に掲載された第1回のテーマは、「ありがた迷惑、火の用心」。これもブログの告知に書いてありますが、「いまや市民の善意の象徴ともなっている火の用心の夜回り。それを批判してしまうというタブーにチャレンジ」したという、「犯罪者に優しい防犯パトロール」を、さらに深化させた内容になっています。

 私はさっそく図書館に行って読んだのですが、読み応え十分。防犯パトロールという善意の押しつけは、ただうるさいだけで実際にはなんの役にも立っていないこと、昔から、その迷惑行為に反対してきた人たちが(わずかながらでも)いたこと、しかし、そういう意見が結局は社会に受け入れられず、いかにして「絶対善を信奉する多数者の声」に握り潰されてきたかなどを、統計や古い新聞記事を元に解き明かしています。

 でもまあ、なんの効果もない(少なくとも、効果があるかどうかを検証した形跡すらない)のに、「あれに注意しろ! これに気をつけろ!」と、何かに取り憑かれたかのように放送したり、町のあちこちに汚らしい看板を立てたりして、「善意の押しつけ」をしたがるのは、火の用心や防犯パトロールに熱中する人々に限りません。日本というのは防災無線や大型ビジョンからスーパーのアナウンスまで、どんなものでも使って「ああしろ、こうしろ放送」を垂れ流したい人と、垂れ流されて安心したい人ばかりあふれています。「そんな放送、なんの効果もないしうるさいだけだから、やめてくれよ」という少数者の声は、その「絶対的な善(という思い込み)」の前に、ただ切り捨てられてしまうだけというのが現状なのです。

 この記事を読んで意外だったのは、実は大正から昭和の初めにかけて、警察が何度も「夜回り禁止令」を出していたという事実です。結局は、その命令も「善意の人々」によってないがしろにされ、迷惑な夜回りが復活し、また「うるさい」という声で警察が禁止令を出し、「善意の人々」によって……という繰り返しが、たびたびあったというのです。
 こうした事実からわかるのは、日本人の「善意のためなら、人が迷惑に思おうがどうでももええねん! 効果があるかどうかも、どうでもええねん! 禁止令? そんなもん、ええことのためならどうでもええっちゅーねん!」という、「ご注意」をまるで宗教のようにとらえる信仰心の強さですね。まさに記事でマッツァリーノ氏が書いている通り、「日本人であるあなたがたに、アフリカの部族の風習を笑う資格はありません」という話です。

 そして最悪なことに、こうした日本人の「ご注意信仰」は、ますます強くなっていく一方です。
 夜回りに限っても、もともと私の住んでいる市では、消防団が消防車で走り回り、鐘を叩きまくる師走の「火の用心」は、年末の3日間ぐらいでした。ところが去年、急にその期間が1週間近くに延び、鐘だけでなく「火の元に注意しましょう!」という放送が加わって、さらに(なんと!)夜中の12時まで走り回るというように、とんでもなくエスカレートしてしまったのです。
 去年と同様であれば、「カーン! カーン!」という耳につく鐘の音と、「年末です、空気が乾燥しています! 火の元に注意しましょう!」というやかましい放送で悩まされる夜が、ちょうど今日あたりから始まるはず。もう、それを考えるだけでうんざりしてしまいます。なんで1年の締めくくりに、こんなイヤ~な思いをしなきゃならんのよ?

4時間も続く年末消防団騒音
日付変更まで続く消防団騒音
これじゃ暴走族も消防団も同じだ

 ちなみにマッツァリーノ氏の連載、現在発売中の1月号には、「治安のいい日本で暮らせてよかった~!」が掲載されています。「体感治安と実際の治安状況のズレ」をテーマに、「現在の日本は、おそらく歴史上もっとも犯罪発生率が低くなっているのに、逆に、犯罪不安におびえる人はもっとも多くなっているという不思議な現象を、過去と現在を比較することで、あらためて検証」した内容となっています。

 この連載は直接的に「音」の問題を取り上げたわけではありませんし、マッツァリーノ氏と本会には、機関誌にブログの転載を許可してくださった以上の関係はありません(そのやりとりをしたのは私ではないので、氏の正体も知りません)。ですが第2回の記事も、「振り込め詐欺に注意しましょう!」「最近、ひったくりが増えています!」というようなおせっかいな放送が、いかに無駄でうるさいだけか、そのことをデータの面から実証してくれる、読み応えのある内容となっているのでおすすめです。

 ※追記:「むかしはよかったね?」が『「昔はよかった」病』のタイトルで新潮社から発売中。「第1章 ありがた迷惑、火の用心」、「第2章 治安のいい日本で暮らせてよかった~!」、「第6章 まちがいだらけの自警団」、「第8章 安全・安心ウォーZ」、「第9章 ハイテンションな元気をもらいました!」、「第11章 ありのままの敬老の日」、「第12章 ウザい絆とキモいふれあい」は必読です。
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カテゴリ:防災無線・広報車・夜回り
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Author:静かな街を考える会 別館
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