お笑い車掌の箱根登山鉄道には、絶対乗りません
 電車に乗れば乗るたびに、駅に降りれば降りるたびに、けたたましいアナウンスや押しつけがましいメロディーの氾濫にうんざりしてしまいます。
 実際に乗らなくても、ときどき新聞などに掲載される「こんなアナウンスやメロディーを流す駅があるんですよ~。知ってました!?」という記事を見るだけで、「どうして日本人というのは、こんなにも音に鈍感でいられるんだろう」と、首をひねるばかりです。

 1カ月ほど前、JR総武線の千駄ヶ谷駅に降りました。ここは他のJRの駅と同様、改札口付近で旅行案内のアナウンスをエンドレスで流しっ放しにしていましたが、私が特におかしいと思ったのは、改札の中と外の両方でアナウンスを流していたこと。どちらか一方ならまだしも、至近距離で2カ所から、同時に宣伝放送を流して平気でいられる鈍感さって、いったいなんなんだろう……。

 アナウンスの内容は、「新宿周辺のスタンプラリーのお知らせ」と、「秋田旅行キャンペーン」でした。

千駄ヶ谷旅行案内放送.MP3

 「秋田は、心も体も癒やしてくれる名湯ばかりです」などと、押しつけがましく宣伝しているわけですが、別に秋田まで行かなくても、こういううるさい放送をやめてくれるだけで、私は「心も体も癒やされる」んだけどなあ。

 次は、いくつかの(私に言わせれば)唖然とする新聞記事です。

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ドラマ『踊る大捜査線』@お台場

青島が駆けた、寂しき埋め立て地

 りんかい線東京テレポート駅。ホームにテーマ曲が響く。織田裕二演じる主人公、青島俊作はこの駅を通勤に使っていた。「お台場の玄関口」としてPRしようと5年前、発車メロディーに採用された。通常のベルに戻すことも検討されたが、「やっぱり『踊る~』がしっくりくる」という乗客や車掌ら“現場”の声を優先したという(後略)。
 (文・岩本恵美、写真・古市智之)

東京テレポート駅記事.jpg

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 「やっぱり『踊る~』がしっくりくる」という乗客や車掌ら“現場”の声を優先した――。ですか。
 でも、「駅で聞きたくもない音楽を流さないでくれ。聞きたくない者の苦痛も考えてくれ」という「声」を上げたとしても、きっと、まさにその「現場」に握りつぶされるだけなんでしょうね。嫌がる人の「痛み」を考えることすらできないのに、よくもまあ「現場~、現場~」なんて言えるものだとあきれます。青島刑事とは雲泥の差ですねっ!

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福島駅(福島県 JR東北新幹線)

甲子園メロディーで発車

 ホームには一年中、甲子園の曲が流れる。古関裕而(ゆうじ)作曲、全国高校野球選手権大会歌「栄冠は君に輝く」。福島市中心部で生まれ育った作曲家にちなんで、発車メロディーに採用された。
(中略)
 福島青年会議所のメンバーだった黒沢さんは仲間とともに、古関の作品を発車メロディーにするようJR東日本に働きかけた。約5千曲ある古関作品から市民アンケートなどで「栄冠は君に輝く」を選び、専門家にアレンジを依頼するなど実務を買ってでた。古関の生誕百年に当たる2009年、初めてメロディーがホームに流された。「うるっときました」
(中略)
 駅はまもなく、盆休みのラッシュを迎える。帰省や出迎えの人たちでにぎわうホームを、心を鼓舞するメロディーが包み込む。

 文 塩田麻衣子/撮影 馬田広亘

福島駅記事.jpg

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 こういう記事を読むと、ほんと、日本中の至る所に「余計なことをする人」がいるものだなあと感心します。この黒沢信之という人は、自分が「うるっと」するためなら、「そんなメロディーは聞きたくない。駅に音楽なんていらない」と考える人のことなど、どうでもいいんでしょう。

 だいたいなぜ、駅のホームに「心を鼓舞するメロディー」が必要なんでしょうか。駅というのは常に危険があふれている場所なのだから、できるだけ静かにして、乗客が冷静に、落ち着いて乗降できる環境を整えるのが、鉄道会社の義務だろうと私は思います。
 それなのに、ただでさえ混雑する「盆休みのラッシュ」のホームで「心を鼓舞」して、乗客の危険度が増すような状況までうれしそうに紹介しているのがこの記事。
 そういう無神経な記事を書ける塩田麻衣子という記者の頭の中も、私にはさっぱり理解できません。

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大平台駅(神奈川県、箱根登山鉄道・鉄道線)

思わず聞き耳、名物車内放送

 「40分間しゃべり倒します!」。高らかな宣言で口火を切った車内放送は、本当に終点まで続いた。笑いを誘うアナウンスが評判の車掌がいると聞き、声の主である落合伸哉さん(26)を訪ねた。

 始発の強羅駅を発った電車は山を下り始める。「今年のぉ箱根駅伝~、この小涌谷踏切ではぁ、選手の通過を待ってぇな~んと……10分間も停車しておりましたあ~!」。次々と繰り出される車内放送は、沿線の観光案内が中心。独特の抑揚とリズムが、耳をとらえて離さない。

 正面に座るご婦人と目が合った。「朝の通勤電車なら考えられないわね」と楽しそう。どの乗客も放送に耳を澄ませ、旅の仲間と笑い合う。

 電車は大平台駅に到着した。山を登ってくる電車とのすれ違いで生じた停車時間は、落合さんいわく「写真撮影タイム」。車内を検札に回ればたちまち子どもたちに取り囲まれる。制帽を脱いで男の子にかぶせると、笑顔で一枚の写真に収まった。「3、4歳の時、自分もかぶせてもらってうれしかったんですよね」

 それが原体験になった落合さんは、約1年半前に念願の仕事に就いた。風邪をひいて鼻声でした放送が乗客に受け、現在のスタイルにつながったという。

 乗り換えの箱根湯本駅。「降りる時のぉ、おしくらまんじゅうはぁ~、ご遠慮願います!」。降りる支度を始めていた乗客の間いっぱいに拍手が広がり、車内は温かい雰囲気に包まれた。

 文 岡山朋代/撮影 馬田広亘

箱根登山鉄道記事.jpg

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 これはもう、最悪中の最悪だと思いま~す。冗談じゃないですね。

 私は、この落合伸哉という車掌の乗る列車がどれなのか、時刻表を見れば事前に把握できて、「そんなやかましい車内放送、聞きたくない」という乗客は避けることができるのだろうか。あるいは、この車掌の放送が流れるのは一編成の中の限られた車両だから、聞きたくない乗客は他の車両に逃げることができるのだろうか。それだけでも調べようと思って箱根登山鉄道のホームページを見たのですが、そんな情報、どこにも載っていませんでした。
 ということは、うっかりこの車掌の電車に乗り合わせてしまったら、どんなに嫌でも「40分間しゃべり倒す」車内放送を、無理やり聞かされるはめになるということですね。それって、音による拷問とどこが違うんでしょうか?

 私はこの記事を読んで、本気で「この車掌がいる限り、箱根登山鉄道だけは乗らない」と思いました。今まで箱根には仕事で何度か行ったことがありますが、それはすべて車です。今後も必ず車だけにして、箱根登山鉄道に乗る事態だけは何がなんでも避けますよ。

 「40分間しゃべり倒す」車内放送なんて、ハッキリ言って常軌を逸してるし、「10分間も停車しておりましたあ~!」だの、「おしくらまんじゅうはぁ~、ご遠慮願います!」だのといった、ギャグにすらなっていない幼稚な放送を聞かされても、ちっともおもしろくありません。
 また、いくら箱根登山鉄道が観光路線といっても、すべての乗客が「子ども連れの楽しい観光旅行」を目的に乗っているわけではないでしょう。静かに箱根の景色を眺めたい旅行客とか、しっぽり旅情を味わいたい中年不倫カップルとか、旅館の経営問題で頭がいっぱいになっているビジネス客とかも、間違いなくいるはずです。
 そんなふうに、電車の中にはいろいろな目的や思いを抱えた人がいるという「当たり前」のことを、この車掌や箱根登山鉄道は、ほんの少しでも想像することができないのでしょうか。

 もし、私が箱根登山鉄道に乗って、この車掌の放送で旅情をぶち壊しにされたら、必ずその場で猛抗議をするでしょうね。そして「絶対にやめない」と言うなら、「終点までのタクシー代を払え」と要求するでしょう。
 この落合伸哉という車掌のやっていることは、それぐらいひどいことだと思います。

 私がこの車掌の車内放送を、ここまで問題視するのは、ただ「うるさい」とか、「そんなくだらない放送は聞きたくない」という、感覚的な理由だけではありません。鉄道の車掌というのは、「列車の安全運行のために働くことが職務」なのに、この落合伸哉という車掌はその大切な業務をおろそか(少なくとも二の次)にしているとしか思えないからです。

 私は以前、ある航空評論家と話をしたことがあるのですが、その人は「日本人は、キャビンアテンダントのことを、まるでホステスかファミレスの店員のようにしか見ていない。キャビンアテンダントはサービス係ではなく、飛行機の保安のために乗務しているということを、まったく理解してないんだよね」と、ため息をつきながら嘆いていました。

 キャビンアテンダントはただの接客係ではない。飛行機を安全運行させるために乗務する保安要員だというのは、航空関係の法律だかなんだかに書いてあることだそうです。当然、キャビンアテンダント本人も、そのことをしっかり理解して乗務している(はず)です。
 それなのに乗客、特に日本人の乗客は「酒持ってこーい」だの、「言わなくても雑誌持ってきてよ! それが、お・も・て・な・し、でしょ!」だのと、まるでホステスまがいのサービスを要求し、キャビンアテンダントはそれに応えるのが当然! と思い込んでいる人ばかりだそう。そのせいで日本の航空会社のキャビンアテンダントは、外国と比べて肝心の「保安業務」がかなりの部分で、おろそかになっているのが実情なのだそうです。

 この状況と同じことが、箱根登山鉄道や落合伸哉という車掌にも言えるのではないでしょうか。これはなんの資料で読んだか覚えていないのですが、鉄道関係にも「車掌が乗務する第一の目的は、列車の安全運行や乗客の安全輸送のため」という法律だか、鉄道会社の「当然の理念」だかみたいなものがあるそうです。その理念は、当たり前すぎるほど当たり前のものでしょう。

 その視点から、この落合伸哉という車掌がやっている「お笑い車内放送」を見ると、私には「保安のために乗務している車掌」とは、とても思えないのです。「安全にもちゃんと気を配ってるよ!」と口先ならいくらでも言えるでしょうが、「40分間しゃべり倒し」ながら、本当に「保安」の仕事が務まるものなんでしょうか?

 私には疑問です。こんな車掌が乗っている箱根登山鉄道で、安全が確保されているとはとても考えられません。私がこのお笑い車内放送を「おかしい」と思う一番の理由は、そこにあります。
 もし、この車掌が貸し切り列車専門とか、車両限定とかで乗務しているのなら、乗りたい人は乗ればいいし、乗りたくない人は無視すればいいだけ。お笑い放送のせいで安全がないがしろにされてもかまわない人は、好きに乗ればいいんじゃないの? というだけの話なんですけれども、そうでないなら問題外です。

 しかし、このブログは長いな。書き終わって、まるで40分間しゃべり倒したように疲れてしまいましたあ~!
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Author:静かな街を考える会 別館
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