伝達方法がどうのと言う前に、自分が声をかけようよ
7月6日、朝日新聞朝刊の読者投稿欄「声」に、東京都練馬区に住む中学生からの投稿が掲載されていました。これを読んで、「日本の防災無線教(ご注意アナウンス教)は、ますます盤石だなあ」と、げんなりした気持ちになったものです。

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(声)若い世代 地元でも事件の情報を伝えて

中学生 K(東京都練馬区 13)

 練馬区の小学生男児3人が下校途中にナイフで切られてけがをした。ぼくの家は同じ練馬区でも事件のあった小学校からは離れているが、母の友人から自宅に「大丈夫? 近いの?」とメールが入った。テレビをつけると、事件のニュースが繰り返し放送されていた。

 「もしかしたら、犯人が家の近くまで逃げてきているかもしれないから、窓を閉めたほうがいいよ」とまた、母にメールが入った。「本当にそうだね」と母。そのときは犯人が逮捕されているのかどうかわからず、ぼくも1階の窓を閉めるのを手伝った。外を見ると、幼い子ども連れの親子が何組も、まるで何もなかったかのように家の前を歩いていた。もしここにナイフを持った犯人が来たら怖いなと思った。

 地震速報はすぐに携帯や地域のスピーカーで流れる。なのに、なぜ、人の命に関わる事件の警告は地元にすぐには流れないのだろうか。伝達方法をもっと見直すべきだと感じた。

(声)若い世代 地元でも事件の情報を伝えて.jpg

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そ、そうですか……。

まずよくわからないのが、K君はなぜ「ぼくの家は同じ練馬区でも事件のあった小学校からは離れている」とちゃんと理解しているにもかかわらず、テレビのニュースや母親宛てに入ったメールを見て、これほどまでにおびえる必要があるのかです。「窓を閉めた」(鍵もちゃんとかけたのでしょう)のなら、よほどのことがなければ事件に巻き込まれるようなことはないはずだし、もう13歳なのだから、自分の頭で冷静に状況を判断する、ということができないのだろうかと率直に思います。

まあ、実際にK君の自宅と事件のあった場所の距離が、どれくらい離れているのかまではわからないので、事件を知っておびえることは、仕方ないのかもしれません。本当の問題はその後です。

このときK君は、「外を見ると、幼い子ども連れの親子が何組も、まるで何もなかったかのように家の前を歩いていた。もしここにナイフを持った犯人が来たら怖いなと思った」。それなのに、「ナイフを持った犯人がいるかもしれませんよ。危ないから外に出ないほうがいいですよ」と自ら親子連れに声をかけ、注意してあげるような行動は一切とっていないわけです。その代わり地震速報のように、犯罪が起きたらすぐ、防災無線や携帯メールで情報を流してほしいと、わざわざ新聞にまで投稿して主張しているわけです。

本当に、それでいいのかな?

近くにナイフを持った犯人がいるかもしれない、このままだと親子連れが危ない――と思うのなら、K君自ら親子連れに「危ないですよ。外に出ないほうがいいですよ」と、一声かけてあげればいいじゃないか。なんたって、目の前に「声をかけてあげたい相手」がいるんだから、それが一番手っ取り早いし、人間として一番「やさしい行動」なんじゃないのかなあ。
本当に危険なら、自分で注意するのが恥ずかしいだのなんだの言ってる場合じゃないし、そういうケースで声をかけてあげることは、どこからどう見ても「いいこと」でしょう。なのになぜK君は、自ら声を出さずにただ見ているだけで、肝心の注意を「お上の声」に頼ろうとするのでしょう……。

自ら声を出すことをせず、その代わりに防災無線だの携帯メールだので「ああしろ、こうしろ」と指示してくれという発想ばかりする人――。これはK君に限りません。防災無線から駅のアナウンスまで、いたるところで「ご注意、お知らせ放送」を流さないと(聞かないと)気が済まない日本人全体の特徴です。そんな発想が、すでに13歳で確立されてしまっていることに私はげんなりしてしまいます。

「伝達方法をもっと見直すべきだと感じた」などと安易で人任せなことを言う前に、まず、自ら行動できることをすればいいじゃないか。みんながもう少しそうするようになれば、町であっても駅であっても、よけいなアナウンスを今よりずっと減らしても誰も困りません。困りそうな人がいたら「お上のアナウンス」に頼るのではなく、自分の肉声で「大丈夫ですか」と声をかけてあげればいいし、逆に自分が困りそうだと思ったら、自ら「助けてくれませんか」と周囲に向けて声を出せばいいじゃないか。

「人が声を出す」社会とはほど遠い「お上の声頼み」ばかりの日本。その典型的な考え方がこのK君の投稿に表れていて、しかもそれがいかにも「正論」であるかのように新聞の投稿欄に載っていることが、私は悲しくてなりません(ま、新聞の読者投稿なんて、どれもこれも「そんなもん」ですが)。
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カテゴリ:防災無線・広報車・夜回り
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