被害にあったのは防災無線が故障したせい?
東日本大震災の津波で、大勢の人が犠牲になったことは悲しく思います。また、そのような災害が起きたとき、一人でも多くの人が助かったほうがよいし、行政や自治体ができる限り助ける努力をするべきであることに疑いは持ちません。
しかし、やっぱりどこかおかしい……。

宮城県名取市閖上地区で津波の犠牲にあった方々の遺族が、震災当日、市の防災無線が故障して避難命令が鳴らなかったことについて、市に対し説明や謝罪を求める公開質問状を出したそうです。
http://mainichi.jp/select/news/20120529k0000e040182000c.html
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120530/myg12053002030003-n1.htm
http://www.asahi.com/national/update/0529/TKY201205290158.html

これらの記事によれば、遺族会は津波による犠牲が広がったのは、地震による防災無線の故障で避難命令が鳴らなかったことに原因があり、「無線が鳴り、広報車が来ていれば逃げていたと思う」「鳴っていれば助かった命もあった」と主張。どうやら「自分たちは市からの避難命令がなかったから逃げず、その結果、津波の被害にあったのだ」と言っているようです。

なぜ、この方たちは「自分の命を守るために避難するかしないか」という判断を、「行政からの命令」にここまでゆだねてしまうのでしょう。海岸付近に住んでいて大きな地震に見舞われたのですから、テレビやラジオなどで自ら情報を確認し行動するとか、「どういう状況かよくわからないが、とりあえず避難しておこう」という自主的な判断を、なぜしなかったのでしょう。

もちろん、災害時には「正常性バイアス」がかかってしまい、「逃げる」という判断をするのが意外に難しいのだということは、今回の震災でよく知れ渡ったことです。私だって同じ所に住んで同じ目に合っていたら、「逃げる」という判断ができたかどうかわからないと思います。
犠牲者の方々の間にはたぶん、防災無線がそのような「正常性バイアス」を解き、避難をうながす大きなきっかけになったかもしれないのに、放送がなかったせいで被害にあってしまったのだという気持ちがあるのでしょう。その無念さはわからないでもありません。

それにしても、です。防災無線で避難命令が出されていれば100%確実に避難し助かっていた、と言い切れるわけでもないでしょう。避難しなかったのはあくまでも一人ひとりの判断によるものなのに、それを行政の責任だと言い、説明はともかく謝罪まで迫るというのは、ちょっといきすぎでははないでしょうか。
「忘れ物をしたのは車掌が『お忘れ物にご注意ください』とアナウンスしなかったからだ!」「エスカレーターで転んだのは店が『足元にご注意ください』と放送しなかったからだ!」と、なんでもかんでも「お上」のせいにし、管理放送を蔓延させてしまう構図と同じ現象がここにあると私は思います。

それと同時に、防災無線そのものの「役にたたなさ」も、あらためて露わになっていると思います。

「(名取市は)閖上地区に5基、下増田地区に4基の拡声機を08年度に設置。だが震災当日は全9基が送信装置の故障で音が出ず、避難指示など計14回の放送は住民に届かなかった。市の調査では、地震の揺れが原因で送信装置の電源がショートしたとされる。」

本当にいざというときには、いとも簡単に「電源がショート」し使い物にならなくなる防災無線。
最初からこんなものに自らの生活や命を預けることなく、日頃から自分で判断する訓練を積んでおくことが何より大切だということがよくわかります。

また、全国の自治体は時報やチャイム、「●●しましょう」といったすべての無駄なお知らせ放送や管理放送をやめ、住民が「防災無線が鳴ったときは、本当の危機なんだ」とすばやく察知できる運用方法に一刻も早くあらためるべきです。
でないと、いざというときにいくら避難命令を放送しても、結局のところ「正常性バイアス」を打ち破ることなどできないのではないでしょうか。
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カテゴリ:防災無線・広報車・夜回り
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